「零細企業」とひとことで言っても、業界によっては実際の規模にはかなり差があるだろう。
私が働く編集制作・出版業界はそもそもが所帯の小さい会社が大部分をしめるので、零細と言ったら本当に5人以下、なんなら1人か2人というところはいくらでもあると思う。大きいところでも、純粋な「出版社」だと社員は1,000人くらいみたいだ。1
私自身、とても小さい会社で20年以上働いてきたのだが、社内の人員が4人以上になったことはない。
もちろん零細企業だからこそのデメリットはある。
- できる仕事が限られている(入札とかに参加できないししても勝てない、会社の名前で仕事はとれない、手広く新事業とかまでやる余裕はない、とか)。
- 自分の能力を、測定するのが難しい(欠員補充で入って、同期入社の人がいないから比較できない)。
- 働いている人との相性が合わないと困る(すでに働いている人のほうが大切な場合は当然多いし、部署移動はできない)。
- めちゃくちゃ儲かることはない(いや、これは会社によるかも)。
それでも、言いたいことを言えて、聞いてくれる人がいて、議論しお互いに指摘し合ってきた。総じて、お客さんにとって、なにより自分にとって“よい仕事”をしたいと思う人が多かった。楽しみもやりがいもあったし、それなりの待遇も受けてきたから、悪いことはあまりなかった。いい会社だった。
零細企業のメリットは、こういうことだろうか。
- 上司や先輩の仕事を間近で見て勉強できるし、疑問を解消しやすい。
- 仕事を任せてもらえるようになるのが早い(新人でも自分にしかない技能があると存在感が出せる)。
- 社内の調整で疲弊することがない(すぐそこに上司や先輩がいるから相談も決定も早い)。
- 仕事の流れ全体を把握しやすい(大きい会社だと自分の仕事の前後くらいしかわからないのかも)。
- 「働く」「お金を稼ぐ」ことの実際が学べる(働いて生きていくための力が幅広く身につく)。
- 時間の融通がつけやすい(これもすぐに相談しやすいから)。
とはいえ、「誰にでも」合うわけではないな。
だって、零細企業ということはほとんど人員がいないのであるからして、必然的にそこで働く人間は、全部をそれなりにクリアしなければならないのだ。
100点の技術はなくても、60点〜90点くらいの幅にスキルをもっていかねばならない。
……全部とは?
文字どおりに「全部」だよ、全部。
メイン業務(私の場合は編集・取材記者。だから企画・取材・原稿作成・編集・変更整理・DTPあたり)はさすがに一番点数がほしい。だけどそれ「だけ」じゃなくて、経理も人事も労務も総務も営業もなんなら社交も掃除も販売も電話番もお菓子配り番も社員の健康アドバイスも上役のパソコンのメンテナンスも、なんでも全部、そこそこできなくてはならない。
「やらなくてもよいこと」は、ない。管理職になったらもちろんだけど、社員だってそう。給料の計算以外はだいたいやる(ことになる、いずれ)。
そういうものなのだ。大きい会社とは違うんだよ。
向き不向きはある。
大勢の中のひとりだったらそれなりに仕事ができる人もいるし、自分の仕事だけできる環境ならすごい能力を発揮する人もいる。でも、そういう人に零細企業はまったく向いてない。「自分の仕事以外のことは誰かがやってくれる」環境ではないからだ。
知らんぷりはできない。知らないこともうまくできないことも、調べたり尋ねたりして繰り返しやることで、少しずつでもできるようになるしかない。じゃないと、何も進まない。
そういうものなんだなと早めに理解して、そのように動くことができる人、出力を調整できる人しか、そこで働き続けるのは難しいのだと思う。
私は、どうだったんだろう?
「向いている」とまではいえないけれど、なんとかできる、くらいにはなったのかもしれないな。2