波間に向かって小壜を投げる

シンプルな、文字だけの、自分用のサイトをつくってみる。 誰かとつながりたいわけじゃない。たくさんの人に見られたいわけでもない。評価とか別にいらない。誰かが見てくれてもいいけど、見られなくてもいい。何か言いたかったら言ってもらってもいいけど、別に無言でもかまわない。だって書きたいだけだから。 それくらいの気持ちで文字を書きたい。 海に、手紙を詰めた小壜を流すように。波間の、できるだけ遠くに向かって投げるように。

June 21, 2026 · akio

Hugoサイトのメンテナンス

記事を書くのには慣れてきたけれど、そうするとウェブサイトを構成するフォルダや書類の名前とかファイル構造とかが気になってくる(中身の外側、というか)。 そもそもVScode上でターミナルを起動できることにさっき気づいた……。アンタ(VScode)ってただのエディタじゃなかったんだね。ポテンシャルを生かせてなかったよ。なんかごめん。 というわけでちょっとおさらい、そして気になっていたことを修正(例によっていちいちGeminiに質問しつつ)。 まず、Hugoサイトの構成について復習 layoutsというフォルダは「ウェブサイトの見た目を定義する」もので中身は.htmlファイル。 archetypesというフォルダは「新しく作る記事の初期設定を決める」もので中身は.mdファイル。 hugo.tomlは、サイト全体を規定する一番重要な書類で、サイト名、URL、使用テーマ、メニュー、言語設定などをここで設定する(トップページの表示内容を[params]などとして供給することもあるが、見た目そのものを整形するのはlayouts内のindex.html)。 content > postsフォルダ内のMarkdown書類や画像が、自分でつくるサイトの中身。ちなみに、この「content」だけは単数形! Hugoの内部システムで厳密に定義されているため、スペル変更はできない仕様なんだって。「情報やコンテンツという抽象概念(不可算名詞)の集まり」という意味でこの単語が採用されたとのこと。 themesは主に外観のきせかえパーツ。いろんな人がつくってくれているのをさしかえできる。この中身は更新されることがあるので触らない! どこかカスタマイズしたいときはlayoutsフォルダにここから必要なHTML書類をコピーしてそれを変更する。 publicはHugoを起動すると自動で生成されるから触っても意味なし。ごちゃついてきたら捨ててもよい(すぐに新しいのができる)。 Hugoには「特定のフォルダ名を見て、自動でその役割を判断するルール(ディレクトリ構造の約束事)」があるとのこと。だから、こういう決まった書き方があるのだね。自分で勝手に直したりつくったりしちゃいけないんだな。あたりまえか。 Hugoのファイル構造の整理とアーキタイプ設定 ファイル構造の整理。フォルダ名postをpostsに。hugo.tomlのナビゲーションメニューのリンク名を直しただけだと、エラーに。個別記事内に、別記事へのリンクがはってあってそこにフォルダ名の指定があったのを忘れていた。 個別記事ページで、タグが記事より下に表示されていたのを、タイトル、日付の下に入れたい。theme > layoutsからコピーしたsingle.html内でタグの位置を修正。どこまでタグの指示に関することなのかがわかりにくいので難しかった。 新規記事作成は手動でMarkdown書類を作成していたけど、テンプレートを整えておけばよいのだった。TOML形式(+++区切り、キーと値を=で結ぶ)だったのをちょっと書き慣れてきたYAML形式(−−−区切り、キーと値を:で結ぶ)にして、今使っているフォーマットになるように。Archives用に年月を設定するのだけわからなかった。これでhugo new posts/20XX-XX-XX.mdと入力すればpostフォルダ内に新規記事が作成されるみたい。 ちょっと、なるほどと思ったのは、「数字」の扱い方。単に文字列とみなすこともできるけれど、数字にはいろいろ機能がある。「数」「値段」「気温」「日付(年月日)」「時間」「角度」「緯度経度」などいろんなことを表せる(今、あたりまえのことを言っていますよ)。 コンピュータに数字を与えるとき、何も指定しないとただの記号で、ほかの文字と同じ扱いになってしまう。だから「これはいずれかのデータ(型)、固定の文字列ではなく、決まった動き方(増え方減り方、上限下限などの決まりがある)をするものだよ!」と指示しないいけないとうことだ。 指定するとなにが変わるかというと、それに従った法則で動くようになる。年月だったら「2026/16」とかにはならず、年月専用の動きをする。 ……なんか、あたりまえと思っていたことも、簡単じゃなかったんだな。普通のことを言っていますが、とても勉強になっている。 「今やった作業を他人に説明するときにはなんて言ったらいいのだろう」ということからして、疑問ばかりだ。言葉が合っているか、他人に伝わるか(相手のレベルにもよるし、自分がわかるかもあるし)、説明できるか。ひっかかりがちな性格のせいでなかなか進まないけど、おもしろくはある。 やったことをPushしようとしたらリポジトリにあるデータとちがうよ!とエラー。あれ……Pullしたはずなのになあ。 hint: Updates were rejected because the tip of your current branch is behind hint: its remote counterpart. If you want to integrate the remote changes, hint: use ‘git pull’ before pushing again. hint: See the ‘Note about fast-forwards’ in ‘git push –help’ for details. ...

July 15, 2026 · akio

私とAIのタロットリーディング

タロットカードのキーワード更新 GeminiとつくったタロットリーディングのPythonアプリ、カードのキーワードをChatGPTで更新した。Geminiが拾ってくれた一般的なキーワードを採用していたけれども、「重複がある気がするがどうか」「よい意味に振りすぎているのではないか」ということが気になっていたのだ。 そこで、Geminiによるキーワード一覧をChatGPTに提示し、修正提案を頼んだ。 ChatGPTはここのところ、私の考えてること、すきな本、仕事の仕方、言葉の遣い方とか言い回しとかに沿っただいぶ違和感ない返答をするようになったので、ちょっと他のLLMより一歩抜きん出た感じ。今回の提案も納得できるものだったのでそのままさしかえようかなと思ったら、「全体の抽象度やレベルをそろえたほうがよい」とのこと。確かにそれも整理したかったことだ。 それに、一部を修正をすると全体のバランスが壊れると。それもそのとおりだね。 ま、ほんとうは自分でやるべきなのだが、78枚もあるのでちょっと大変。あと、タロットカードの意味はいまさら私が考えてつくりだすでもないのでご勘弁いただきたい。 ということで、以下の方針でキーワードをそろえてくれ、と指示することに。 苦難や停滞、崩壊などの、厳しい意味も残す。 全体のバランスを再検討して整える。 言葉のレベルをそろえる。逸脱する場合はそれが効果的であるようにする。 原則として、別のカードにまったく同じキーワードを当てない。 とはいえ、一気に全部できるわけではないみたい。 文字数制限もあるので、3回に分けて全体をそろえてからさらに調整をするという。 大アルカナ 小アルカナ:ワンド、カップ 小アルカナ:ソード、ペンタクル 重複語の除去 派生語の整理 抽象度の統一 カード固有性の強化 AIが扱いやすい語彙への最終調整 ChatGPT1といえども、これを一度で処理するのは難しいんだって(課金してないからかもしれないけど)。まず全部をそろえてから、微調整するほうが確実だと。一覧する段階が必要みたいだ。ふーん。そこはなんか、人間と一緒のような。 結局、少し近接するキーワードも残ったけれど、カードには絵があるから、受ける印象はそこでも差別化できるだろう。 カードのキーワード一覧を更新して、プッシュし直したら完成だ。2 私のタロットリーディング 私のリーディングは、米光一成先生に倣って「具体的な占いの結果は、キーワードから当人が思い当たる」という方式を採用している。具体的な質問や状況や感情やなんやかんやは、結局、自分しか知らないし。 で、そのためにはこういう、「カード総体としてバランスがとれていること」は重要だと思う。 レベルの違うものが混じっているのは、私はあまりすきじゃない。見出しのレベルが合ってないと気持ち悪いのと同じだ。そのへんは、編集者っぽい癖だなと思ったりもする。 そもそも、私のタロットリーディングのアプリはとてもシンプルなものだ。 画面上で大アルカナのみかフルデッキ(大アルカナ+小アルカナ)かを選ぶ。 シャッフルする(実際には、したつもりになる)。 一枚ずつ引く(正位置のみ採用/最後の1枚になるまで重複なし)。 ほんとうはスプレッドを再現できたらよかったけど、そこまでは難しいし、スマートフォンの画面じゃよく見えない。 だから開いたカードが何を示すかは、自分であらかじめ決めてから引く。 たとえば、「今の状況は?」「それに対する対処法は?」「対処するとどうなる?」「しないとどうなる?」と、いちいち自分で設問を立てる。 これで、わりとどんなQにも対応できると思う。 私はこう読んだけどあなたどう思う? それで、AIだ。 LLMは、 相談者の文章 質問 カード名 キーワード カード画像 をまとめて読んで、その場で意味を組み立てるのが得意なのだ……と、ChatGPTが言っていた。 でも、私は勝手になにか言ってほしいわけじゃなくて、引いたカードから最初に「思いつく」のは私。 それについて示してから、+αは聞いてみてもいい。 こういう問いでこういうカードが出て、私はこう読んだ。 「で、あなたどう思う?」と、“第ニの読み手”の役割を振る。 これをちょっとやってみた。 今日引いたカード、質問はこんな感じ(▼が私)。 ▼今のうちの会社の状態、どうなんだろう? 🏷️ 1枚目のカード ワンドの9 (Nine of Wands) 【このカードが示すメッセージ】 警戒、備え、持久、防備 ▼「なんとか持ちこたえてる」って感じなのかな。 ▼これからどうしていったらいい? 🏷️ 2枚目のカード ペンタクルの8 (Eight of Pentacles) 【このカードが示すメッセージ】 精進、熟練、鍛錬、継続 ...

July 14, 2026 · akio

話を聞いて、書く

録音文字起こしってそんなに簡単じゃない 取材で録音したあと、文字起こしをうまくやるためのツールはないかと10年以上探し続けているけれど、正直なところいまだ「これで万全!」いうツールはないと思う。 定型の議事録や短いコメントならAIの文字起こしツール(ガジェットとかアプリとか)で完結できる場合もあるかもしれない。ただ、他人が喋った内容を、正しく文字にして、なんならそのまま原稿にするなんて用途で使えるものはないのでは? というより、それを期待するのは無理がある。 そもそも、大抵のインタビューや取材はそんなに万全の環境で録音できないものだ。 ひとりで喋ってるとかマイクからの直入力とかはましだが、BGM大きめの喫茶店だったり隣の席に声の大きい人がいたり、ばさばさ資料を広げられたり机が狭かったり、外で歩きながらだったり。 そして「人間が、あるテーマについてまとまったことを喋る」となると、さらに難しくなる。 まあまあ長い時間かかる(1〜2時間、もっと長いときもある)。 専門的な内容のこともある(文脈を知らないとなにを言っているかわからない)。 資料で補足しないと不明のことがある(大抵の人はそんなに理路整然と喋ってない)。 複数人いることもある(それが入り乱れて喋ることもある)。 だから今のところ、私の作業手順はこんな感じ。 ICレコーダーで録音する。 Adobe PremiereProで文字起こしをする(だいたい起こせるならなんでもいい)。 録音を聞きながら、修正してざっくりまとめる。 ざっくりまとめを使って、一から原稿を書く。 「聞いた話をまとめる」のは簡単か? 私の仕事は主に、人の話を聞いて、まとめることだ。 仕事になっているくらいなのだから、それなりの技能なのだろうけれど、今の世の中ではなぜか軽んじられている。「ライティングは簡単だから儲からない」と、書く仕事をしていない人に言われることがある。 たぶん、そもそも「聞いたことをまとめる」ということ自体に、人はあまり価値を見出していないのだろう。 だって、誰でも「他人の話くらい聞ける」と思っているから。 「聞いたことを書く」なら、聞いたことをそのまま書けばいいんだし、それなら誰だって同じもの(内容)になるだろと思っているから。 でも、全然違うんだよ。 略語を正しく表記する。 専門用語を正しく使う。 話の時系列を正しくする。 使い間違っている言葉を正しくする。 端折られているけれど必要な情報を書き足す。 引用なのか本人の考えなのかを分ける。 どんな調子で話したかで重要度を判定する。 地の文と会話文を分けて、簡潔にわかりやすくする。 大きなまとまりをつくって、話の流れをつくる。 この過程で、各種の辞書や資料(文書とか年表とか)も調べないといけない。 話された内容をそのまま文字にしただけでは、意味がわかる文章にはならない。 聞いたことをまとめて書くことも、読むことも、読んで「なんかへんだな」と気づくことも、どれもちゃんとやろうと思うとけっこう特殊な作業なんだよ、本当は。 「なんかへんだな」は、特にそうだ。 この接続詞はここにはそぐわない。 この順番だと誤解されそう。 この段落は浮いている。 本当はそこを言いたかったんじゃないのでは? この例は余計だ。 こういうことを具体的に説明したいけれど、「違和感」としか言えないことがある。話し聞き、読んできたものから得た情報と、誰向けのどんな媒体に載るのかを照らして、たぶん体験的に判定している。 文章を書くことは、そんなに単純じゃない 母国語で文章を書く。 多くの人は「誰でもできる」と思っているかもしれないけど、誰でも“いい感じ”にできるわけじゃないとも思う。 “いい感じ”って、たとえば、目的に、内容に、媒体に、読み手に、自分の見せたい見せ方に「合っている」ということだ。 文章の問題にはいろいろあって、確実に修正する必要があると、すぐにわかることもある。 語句が間違っている。 文と文がつながっていない。 長すぎる/プツプツ切れすぎる。 ねじれている。 始まりと終わりが対応していない。 でも、これらを修正してもまだそれ以外に、そういう書き方だとなんか嫌な感じがするなあとか、喋って聞いてみたら「なんだ、そういう意味だったんだ」となるとか、そういう「ちょっとしたうまくいってないこと」がまだまだある。 そういう、全体が醸しだす雰囲気や伝達の到達レベルについても、気にしたほうがいいのにな、と思わされる文章はけっこうあるんじゃないだろうか。 解決するのは地道なトレーニング じゃあ、それを生成AIが解決してくれるかっていうと、たぶんそんなことはないと思うんだよ。今はまだ、とかじゃなくて、できないんじゃないかなあ。だって、生成AIがやるのはあくまで「人間が出した指示に応える」ってことなんだから。 「いい感じにして」ってたのむなら、どういうのが「今回求めている“いい感じ”」なのかをちゃんと書かないといけないのだよ? じゃあ人間はどうするのかというと、結局は、地道にトレーニングするということになる。 書いて、読んで、直す。 読んでもらって、指摘してもらって、直す。 しばらく置いておいて、また読んで、直す。 この繰り返し。 近道はない。なかった。これからもないだろう、たぶん。 そう思っている。

July 13, 2026 · akio

零細企業で働くということ

「零細企業」とひとことで言っても、業界によっては実際の規模にはかなり差があるだろう。 私が働く編集制作・出版業界はそもそもが所帯の小さい会社が大部分をしめるので、零細と言ったら本当に5人以下、なんなら1人か2人というところはいくらでもあると思う。大きいところでも、純粋な「出版社」だと社員は1,000人くらいみたいだ。1 私の会社も、20年以上働いてきて、社内の人員が4人以上になったことはない。 もちろん零細企業だからこそのデメリットはある。 できる仕事が限られている(入札とかに参加できないししても勝てない、会社の名前で仕事はとれない、手広く新事業とかまでやる余裕はない、とか)。 自分の能力を、測定するのが難しい(欠員補充で入って、同期入社の人がいないから比較できない)。 働いている人との相性が合わないと困る(すでに働いている人のほうが大切な場合は当然多いし、部署移動はできない)。 めちゃくちゃ儲かることはない(いや、これは会社によるかも)。 だけど、言いたいことを言っても聞いてくれる人がいて、議論し、指摘し合って、よい仕事をしたいと思う人が多かった。総じて。楽しみもやりがいもあったし、それなりの待遇も受けてきたから、悪いことはあまりなかった。いい会社だった。 とはいえ、「誰にでも」合うわけではないな。 だって、零細企業ということはほとんど人員がいないのであるからして、必然的にそこで働く人間は、全部をそれなりにクリアしなければならないのだ。100点の技術はなくても、60点〜90点くらいの幅にスキルを収めねばならない。 全部とは? 文字どおりに「全部」だ、全部。 メイン業務(私の場合は編集・取材記者。だから企画・取材・原稿作成・編集・変更整理・DTPあたり)はさすがに一番点数がほしい。 だけどそれ「だけ」じゃなくて、経理も人事も労務も総務も営業もなんなら社交も掃除も販売も電話番もお菓子配り番も社員の健康アドバイスも上役のパソコンのメンテナンスも、なんでも全部、そこそこできなくてはならない。「やらなくてもよいこと」は、ない。 管理職になったらもちろんだけど、社員だってそう。給料の計算以外はだいたいやる(ことになる、いずれ)。 そういうものなのだ。だって、大きい会社とは違うんだよ。うまくできないことはあるだろうけど、ちょっとずつ、質問したり調べたりして、繰り返しやることで少しずつでもできるようになるしかない。じゃないと、何も動かないから。 だから「そういうものなんだな」と早めに理解して、そのように動くことができる人しか、そこで働き続けるのは難しいのだと思う。合う人もいるし、合わない人もいる。本当は合わなくても、なんとかそこそこ合わせられる人もいる。 私は、どうだったんだろう? 「向いている」とまではいえないけれど、なんとかできる、くらいにはなったのかもしれないな。 学習教材販売・旅行代理店・広告代理店・通信販売・地図製作販売とか、メイン事業が合体している会社の人数は多く見えるけれど、多分「編集・製作」の人はそんなに多くないと思う。 ↩︎

July 13, 2026 · akio

小指のちから

右手の小指を負傷した。そしてはじめて知ったのだ。 小指のちからというものを。 ペットボトルをあける。箸をつかう。包丁をつかむ。ペンをにぎる。ハサミで切る。マグカップをもちあげる。 何をするにも、小指は手の動き全体を支えているのだった。 知らなかったよ。手の小指が不自由だと力があまり入らない。家人は言った。だからヤクザはなにかやらかしたら小指を詰めるんだよ。小指がないと刀の柄を握る力は弱くなる。大事な指だからだ。そうだったのか。あまり重要じゃないから、小反省くらいの意味かと思っていた。違った。 手だけでなく、足の小指もとても重要みたい。 手の小指は、ものを握る動作を安定させる。足の小指は、歩行の安定性を支える。添えものではない。大事な部品だ。 「小さい」からと侮ってはいけない。反省。

July 4, 2026 · akio

祖父と私

私が育ったのは、女が多い家だった。畑仕事と近所でのおしゃべりを楽しみとする祖母、小学校教員の母、その長女である私と、3つ下の妹。男は、寡黙な祖父と帰宅の遅い父だけ。 母方の従兄弟の家も似たようなもので、だから寄り集まっても話すのは女ばかりだった。親戚のこと近所のこと仕事場のこと、子供たちの学校のこと。何時間でも話していられた。 祖父は言葉の足りない人だった。表情の乏しい人だった。端的に言えば、昔の人だ。私の授業参観に母のかわりにやってきたときも、くすりともしなかった。子供たちの寸劇を、終始、真顔で見ていた祖父。祖父も教員だったはずなのだが、私が物心ついたころにはただのおじいさんだった。 田舎の学校の校長として勤め上げ、退職してからは家の田畑と山林の世話をしていた。作業着のズボンと長袖のシャツを着て、長靴を履き、腰にはナタや蚊取り線香のホルダー、細かな道具をぶらさげるベルト。ほとんど髪のない頭にキャップを被って、ゴーグルをつけていた。山の手入れにいったら、ミヤマクワガタを入れて持って帰ってきてくれた。UCCのコーヒー缶の上部を開いて、網とゴムで蓋をした、即席の虫籠を覚えている。 町の歯医者に一緒に行き、治療の後でコーラを飲ませてくれた。年に一度の大きな祭りにも、時代行列を見に連れて行ってくれた。忘れ物をしたらバイクで持ってきてくれた。大学の卒論提出日にバスに乗り遅れたときも、市街地までバイクで送ってくれた。 私は、大学を出てすぐに、東京に来た。帰省は正月とゴールデンウイークとお盆、年に3回。関西と東京の距離からすれば、少なくはなかったはずだ。 その頃にはベッドに寝ていることが多くなっていた祖父のもとにも、顔を出した。 丈夫な人だったが、草刈り機で足を怪我して後は、入院を繰り返した。透析もしていた。 祖父がもともと寡黙だったせいで、私はずっと気がつかなかった。 私のことを、祖父が何も聞かないということに。 悪い人ではなかった。何を考えていたのかまったくわからなかったけれど祖父を嫌いではなかった。私たちは祖父が作った米を食べ、作った野菜を食べていた。 でも、よい人だったとは言えない。 祖父は、昭和20年にその父を亡くした。グアム島で戦死したのだ。祖父は自分の母と祖母、弟ふたり、妹ひとりを育てる側になった。25歳くらいだったのだろうか。結婚したのはいつだったのだろう。あまりよく知らない。 もちろん見合いだった。祖父の行動原理のすべては、家を守ることにあった。家族ではなく、「家」を。 だから、ゆるせなかったのだろう。理解もできなかったのだろう。 家よりも「自分」を優先する、私のことを。 祖父は何ひとつ聞かなかった。私の仕事のことも、生活のことも。思い出してみれば、私の顔もあまり見なかった気がする。 そもそも、私のことを、まだ覚えていたのだろうか。既に、いらないものとして記憶から排除されていたのだろうか。 私は、こどものころからかわいがってもらったと思っていたけれど、それは祖父が私を、跡取り娘だと思っていたからだ。本当に、ただそれだけ。孫だからかわいかったわけではない。 家のためにならない私を、祖父はいなかったものにした。そしてその恨みを、私の母に向けた。 祖母が先に亡くなり、祖父の食事は母が用意するようになった。食事を部屋に運ぶ母に、食べ終わったからといって礼を言うこともない。毎食後、空になった食器の上には短冊が置かれていた。「おまえの育て方が悪かった」「嫁としての価値がない」「おまえのせいで跡取りがいなくなった」「家を潰すつもりか」。 母が、弱い人ではないのは幸いだった。負けず嫌いだし、自分の状況を客観視できるクールな人だ。祖父の呪いの短冊を集め、まとめて保存していた。 「言いたい気持ちはわからんではない」と、祖父の所業を振り返るとき、母はいつもそう言う。「だからといって、あなたの思い通りにはなりませんよ、とも思うけれどね」。 祖父は母を責めたが、名指しているのは私のことだった。 今でも帰省するたび、仏壇に菓子を備えて「帰りました」と手を合わせる。 遺影の祖父はなんの言葉も注がない。困ったときに助けてくれるとも思えない。

July 3, 2026 · akio

ウェブサイトのテーマ交換ができた

最初は、Hugo Bear Blogというテーマ(外観)で、トップページから中に入ったところに、記事が並ぶだけのサイトにした。サイドバーとかがない、とにかくシンプルなタイプ。月ごとの記事数をまとめられるようアーカイブの設定はしてみたけれど、結局日付とタイトルだけがズラズラ並んでしまうのでちょっと目が疲れる。 10日くらい書いてみて、やっぱり、タイトル日付と冒頭数行が見えるようなテーマの方がよい気がした。そこで、Hugoのテーマを眺めてみて、PaperModというのに変更。これもシンプルなデザインで、記事の一覧とアーカイブだけじゃなくて、検索機能もついているみたい。 PaperModのテーマをダウンロードしてきて、hugo.tomlの中の設定を変更して……みたけれど、Hugo Bear Blogのときの設定のままじゃうまくいかない。Geminiは「そのまま使えますよ!」って言うけどそんなことない。これだけのことがなんて大変なんだ。いろんな人の解説を見て、あちこち直して、なんとか希望通りになった。 のだが! そこから何回Git Pushしても、ブラウザ上では変わらない。なんで? GitHubのリポジトリを見たら赤い×印がついている。Cloudflareでエラーが起きているみたい。なによもう。エラーログがきちんと出ていた。それによると、Cloudflare Pagesで設定しているHugoのバージョンが合っていない? ということのようだ。そうなの。知らなかった、ごめん。ここは手動で指定するようだ。何でも勝手に整えて合わせてくれるわけじゃないのだね。 Cloudflare Pagesにあるサイトのデータを開き、settingの中のEnvironment variables(環境変数)にあるHUGO−Versionを変更。やっとデータをきちんと読んでくれた。 エンドユーザーというのは勝手なもので、いつも、誰かが整えて維持管理してくれている便利なものを、ただそういうものとして使うだけ。毎回感謝するわけでもなく、でもうまくいかないときにはすぐに他人のせいにする。いかんな。 おじいさんみたいなことを言ってしまったけど、他人のせいにする前に、ちょっと調べよう。大事なことだよ。 あと、山本貴光さんが「自分でプログラムを書いてみるとわかるけれど、『そのとおりにやってるのに動かない!』となった場合、結構な割合で人間の入力ミスだったりする」と言っていた。ほんとにそう。打ち間違い、入れてはいけない改行やスペース、記述する場所の間違い。……気をつけよう。

July 2, 2026 · akio

2026年5月、戦争と平穏について考えたこと

あまり現実世界のできごとに関心を持てなかった。たぶん平穏だったからだ。いやうそだ。平穏でない場所もあったのに、身近に思っていなかったからだ。力で奪い合う時代は終わったと思いたかったからだ。 でも違ったね。ほんとは知っていたんだけど。 で、小泉悠センセイの本を続けて読んだ今年の4月5月。その読書メモを振り返る。 ◉小泉悠『現代戦争論:ロシア・ウクライナから考える世界の行方』(ちくま新書、2026.2.5) ◉小泉悠『世界の大転換』(SB新書、2026.1.7) 4/3小泉悠 現代戦争論 4/6小泉悠 現代戦争論 1章。死んでいるのは誰なのか。ロシアとウクライナ、どっちがより死んでいるのか。恐ろしいほどの数の人が、ただの数字になっている。 ロシア広いもんな、極東地域の人なんか関係ないのに、モスクワの人の何倍も死んでる。格差社会の下層の方から、やむをえず兵士になり、死ぬ。 「日本だってそうなるのでは?」と思わされる。東京の人は死にに行かない。地方の、生きる手立てのなくなった人が死にに行かされることを想像する。 4/7小泉悠 現代戦争論 4/8小泉悠 現代戦争論 2章。ウクライナは勝てないけれどロシアもまた勝てないという。双方ともに終わらせることができない戦争。 ソ連崩壊後、ロシアの弱体化とロボットやAIを含むハイテクの発達、それらを含んだ戦略の変遷。大国同士の戦争じゃなくて、地域の小国(ロシアから独立した)との紛争、それに勝ち続けることを想定した戦力の形成。結局、人の命は軽視され続ける。 ロシアは完全にウクライナの抵抗力を見誤った。ウクライナは2014年の侵略の記憶を持ち、平時の国内の政治的対立を傍においてでも結束して抵抗することを誓っている。 ウクライナ国土はEU加盟国のどこよりも広いらしい。国防にも力を入れているとのこと。なるほど。 それから、新しいテクノロジーは必ずしも新しい戦い方を生むわけではない。こっちが使ってるものはあっちもつかっている。睨み合って、人間が立ち入れない場所(ノーマンズランド)が広がるだけと。 4/9小泉悠 現代戦争論 4/10小泉悠 現代戦争論 3章。ロシアでも、徴兵は難しいんだな。「契約軍人」と、公にはできない民間軍事会社(ワグネルとか)が主な戦力。2022年にやむをえず徴兵しようとしたときは大規模に反対運動が起こり、該当年齢の20万人が国外に脱出したようだ。その二の舞を恐れて、今は「契約軍人」の採用に力を入れているとのこと。でもその実際は、ほとんどが貧困層の人とか、犯罪者とかみたい。うーん。 結局、誰も戦争になんていきたくないんだよ。お金がもらえて、家や家族への保証があっても、死ぬかもしれないんだし。 ところでロシアの人口は145,551,000人で国土は約17,090,000km2、人口密度は9人/km2。日本の人口124,352,000人で国土は約378,000km2、人口密度は343人/km2。ロシアはウクライナへの侵攻時は36万人の兵士がいたけど、そのうち大部分をあんまりやる気も力もない徴兵で締められており、15万人くらいが投入できる限界だったようだ。そこから、今は150万人(といってるけど実際は113万人)を維持しようと、支払う金を高くしているようだが、そんなにずっと人を確保し続けることができるのかなあ。日本とロシア、そんなに人口変わらないんだから、この兵士の数ってなんか現実的じゃないのでは? 日本の自衛隊はだいたい24万人(といってるけど実際は22万人)。うーーん。戦争を本気でするには、かけられる人員、期間、金、装備(武器)などいろんなことを考えて、可能性のある戦略を選ばないといけないのか。難しい。だからこそプロパガンダとか情報統制とかが重要なんだろう。 ちなみに、国土の広さはロシアがダントツ1位でカナダが2位、その後がアメリカ中国とアメリカが同じくらいで、次いでブラジル、オーストラリア、その下がちょっと離れてインド。一方、人口はインドと中国がダントツの1,2位(1,420,000人以上)、3位アメリカが343,477,000人だから中国の1/4くらい。2章にウクライナはEU加盟国のどの国よりも国土が広いと書いてあった。 ▶キッズ外務省「世界の国々 数字で見て比べてみよう!」 4/11小泉悠 現代戦争論 4章。EUのなかでハンガリーだけやたらとウクライナ支援に反対してるのはなぜかと思ったら、親ロシアというよりほんとにウクライナが嫌いなんだって。ハンガリー系住民が抑圧されていると。うーむ、なかなか複雑だ。 インドや中国、スカンジナビア半島、英仏、東欧、バルト三国、そしてアメリカ。それぞれの利害や思惑。 21世紀半ばに向けて、世界の多極化は避けられないという。ロシアはロシアで勝手に侵略を行い、アメリカもまた理のない侵略を行う。それを、実効のあるチカラで是正できる国も組織ももうない。トランプのアメリカはその役目を完全に降りている。でも、人々は抵抗する、だから大国の思惑がそのまま実現されるとは限らないとのこと。 ほんとかな。「強い抵抗意志を持った非・大国が、大国による(理不尽な)秩序の強要をある程度までは拒否し得ている」(ウクライナについて)。私たちはどうか? 私はどうか? 何もかも失って生きるくらいならすぐ死にたいと思ってしまうけれど。 ...

July 1, 2026 · akio

なぜこんなことを

突然、ウェブサイトをつくってみたりタロットリーディングのウェブアプリケーションをつくってみたりしはじめたのは、以前からやってみたかったからではあるけれど、さやわか氏のウェブサイト「bunkei +ech」を見たからだ。だからちょっとマネした(こわいからリンクは張らない)。 自分がちゃんと理解しているかあまり自信がないが、「それを私もやりたい」というよりは、「そうか、既存のプラットフォームが気に入らないなら自分でつくればいいのか」と改めて思い至って。30年くらい前って、みんなそうしてたよね。私はもう何十年も前、大学に入ったとき、HTMLを使ってウェブサイトをつくりましょうという授業を受けた。大学のサイトにぶらさげる形で公開するやつ。gifの動く絵をつけちゃったりするやつ。グレー地に青字とかのものすごく可読性の低い色づかいにしてしまったりするやつ。遠くに住んでる同じ苗字(ちょっと珍しい)の人からメールが来たなあ。 そのときはウェブサイト(という……なに?部屋?箱?)をつくることにそんなに関心がなく、やがてはgooとかはてなとかfc2とかのブログサービスを使うようになった。匿名で小話を書いたり、自分用のメモだったりするものとして。 そこから、公開する必要のないものは自分だけが見るクローズドなメモアプリに移して、note1とかTwitter…じゃなくてXには変わらず匿名でなにか書いたりしていた。でもなんか、いちいちうるさいのがいや。アイコンをつけろとかタイトル画像を載せろとか、「そうするともっと読まれますよ!」「いいねがもらえますよ!」とか、ほっといてほしい。別にそれがほしくて書いてるんじゃないよ。なんもなくていいの。 おおきなお世話がすぎるので、ただ文字だけ残しておく場所をつくろうと思って、こうなっている。 まだ改良中だけど、しくみを見ながら動かすの、たのしいな。本業も、パソコンで手を動かしてつくることだけど、また違うおもしろさ。 根気がないのが私の弱点だけど、ここに書くことを習慣にしていきたい。 noteに、ポメラ使ってて万年筆とタロットカードがすきでデザインとかしてるという「私かな?」みたいなプロフィールの人がいて、たぶん年齢も住んでる地域も近そうな気がする……。だからといって交流するわけじゃないけども。 ↩︎

June 30, 2026 · akio