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2026年5月、戦争と平穏について考えたこと

Tags: #読書 #社会 #考えたこと

あまり現実世界のできごとに関心を持てなかった。たぶん平穏だったからだ。いやうそだ。平穏でない場所もあったのに、身近に思っていなかったからだ。力で奪い合う時代は終わったと思いたかったからだ。

でも違ったね。ほんとは知っていたんだけど。

で、小泉悠センセイの本を続けて読んだ今年の4月5月。その読書メモを振り返る。

◉小泉悠『現代戦争論:ロシア・ウクライナから考える世界の行方』(ちくま新書、2026.2.5)
◉小泉悠『世界の大転換』(SB新書、2026.1.7)

4/3小泉悠 現代戦争論
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1章。死んでいるのは誰なのか。ロシアとウクライナ、どっちがより死んでいるのか。恐ろしいほどの数の人が、ただの数字になっている。
ロシア広いもんな、極東地域の人なんか関係ないのに、モスクワの人の何倍も死んでる。格差社会の、下層の方から、やむを得ず兵士になり、死ぬ。
「日本だってそうなるでは?」と思わされる。東京の人は死にに行かない。地方の、生きる手立てのなくなった人が死にに行かされることを想像する。

4/7小泉悠 現代戦争論

2章。ウクライナは勝てないけれどロシアもまた勝てないという。双方ともに終わらせることができない戦争。
ソ連崩壊後、ロシアの弱体化とロボットやAIを含むハイテクの発達、それらを含んだ戦略の変遷。大国同士の戦争じゃなくて、地域の小国(ロシアから独立した)との紛争、それに勝ち続けることを想定した戦力の形成。
結局、人の命は軽視され続ける。

4/8小泉悠 現代戦争論

2章続。ロシアは完全にウクライナの抵抗力を見誤った。2014年の侵略の記憶を持ち、ウクライナは平時の国内の政治的対立を傍においてでも結束して抵抗を誓っている。
ウクライナ国土はEU加盟国のどこよりも広いらしい。国防にも力を入れているとのこと。なるほど。
それから、新しいテクノロジーは必ずしも新しい戦い方を生むわけではない。こっちが使ってるものはあっちもつかっている。睨み合って、人間が立ち入れない場所(ノーマンズランド)が広がるだけと。

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3章。ロシアでも、徴兵は難しいんだな。「契約軍人」と、公にはできない民間軍事会社(ワグネルとか)が主な戦力、2022年にやむをえず徴兵しようとしたときは大規模に反対運動が起こり、該当年齢の20万人が国外に脱出したようだ。その二の舞を恐れて、今は「契約軍人」の採用に力を入れているとのこと。でもその実際はは、ほとんどが貧困層とか、犯罪者とかみたい。うーん。
結局、誰も戦争になんていきたくないんだよ。お金がもらえて、家や家族への保証があっても、死ぬかもしれないんだし。

ところでロシアの人口は145,551,000人で国土は約17,090,000km2、人口密度は9人/km2。日本の人口124,352,000人で国土は約378,000km2、人口密度は343人/km2。ロシアはウクライナへの侵攻時は36万人の兵士がいたけど、そのうち大部分をあんまりやる気も力もない徴兵で締められており、15万人くらいが投入できる限界だったようだ。そこから、今は150万人(といってるけど実際は113万人)を維持しようと、支払う金を高くしているようだが、そんなにずっと人を確保し続けることができるのかなあ。日本とロシア、そんなに人口変わらないんだから、この兵士の数ってなんか現実的じゃないのでは?
日本の自衛隊はだいたい24万人(といってるけど実際は22万人)。うーーん。戦争を本気でするには、かけられる人員、期間、金、装備(武器)などいろんなことを考えて、可能性のある戦略を選ばないといけないのか。難しい。だからこそプロパガンダとか情報統制とかが重要なんだろう。
ちなみに、国土の広さはロシアがダントツ1位でカナダが2位、その後がアメリカ中国とアメリカが同じくらいで、次いでブラジル、オーストラリア、その下がちょっと離れてインド。一方、人口はインドと中国がダントツの1,2位(1,420,000人以上)、3位アメリカが343,477,000人だから中国の1/4くらい。2章にウクライナはEU加盟国のどの国よりも国土が広いと書いてあった。
キッズ外務省「世界の国々 数字で見て比べてみよう!」

4/11小泉悠 現代戦争論

4章。EUのなかでハンガリーだけやたらとウクライナ支援に反対してるのはなぜかと思ったら、親ロシアというよりほんとにウクライナが嫌いなんだって。ハンガリー系住民が抑圧されていると。うーむ、なかなか複雑だ。
インドや中国、スカンジナビア半島、英仏、東欧、バルト三国、そしてアメリカ。それぞれの利害や思惑。

4/12小泉悠 現代戦争論(了)

21世紀半ばに向けて、世界の多極化は避けられないという。ロシアはロシアで勝手に侵略を行い、アメリカもまた理のない侵略を行う。それを、実効のあるチカラで是正できる国も組織ももうない。トランプのアメリカはその役目を完全に降りている。でも、人々は抵抗する、だから大国の思惑がそのまま実現されるとは限らないとのこと。
ほんとかな。「強い抵抗意志を持った非・大国が、大国による(理不尽な)秩序の強要をある程度までは拒否し得ている」(ウクライナについて)。私たちはどうか? 私はどうか?
何もかも失って生きるくらいならすぐ死にたいと思ってしまうけれど。

5章。日本への影響。「仮想敵のすべてから海で隔てられている」この国土の、地政学的優位。確かに。イズムィコ先生は9条改定はやむなし派なのかな。そりゃそうか。

おわりに。戦争はあちらから「やって来る」こともある。今の日本にとってはなおさらそうだ。日本が「起こす」ものであってはならないけれど。

そうこうしているうちに、トランプとネタニヤフはイランを侵略しようとした。めちゃくちゃだ。さらに世界の秩序は乱れている。とてもつらい。
2026年5月時点で、ロシアはプーチン氏73歳、ラブロフ氏76歳、ウクライナはゼレンスキー氏48歳、アメリカはトランプ氏79歳、ヴァンス氏41歳、イスラエルはネタニヤフ氏76歳、イランは故ハネメイ氏が83歳、モジタバ氏56歳、アラグチ氏63歳、中国は習近平氏72歳。日本は高市氏65歳、茂木氏70歳、麻生氏85歳、石破氏69歳、岸田氏68歳。うーん……。

5/12小泉悠 世界の大転換 SB新書

中国、アメリカ、ロシア、ヨーロッパ。世界はどうなっていくんだろう。これは2025年時点(まで)の話。2026年の今5月だけどこの半年でだいぶ変わったのかどうなのか?
専門家はどう見てるのか、SNSだけだとよくわかんないな。

第1章は中国。経済から軍事から政治、技術開発まで幅広いな。おもしろい。衰退は目に見え始めている。それでもすごい、中国。
うーん。日本は何ができるんだろ。

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第2章はアメリカ。トランプがどこで誰に支持されたのかはわかった。
アメリカも、日本と同じなのだな。後継者に期待できない。
地道な政策は選挙に結果が現れる特効薬にならないから、まともな人がまともなことをやっても支持されない(バイデンがまともだったかはともかくトランプよりはましだったのでは)。
アメリカが建前を捨てたから、他の国は自分達で組み直しを余儀なくされてるけど、トランプ以後はどうなるんだろ。わからん。
アメリカでも日本でもロシアでも中国でも、普通の人は田舎で、生まれ育った場所で生活を送って行くんだ。そういう人たちが何を求め支持するのか。想像するけど間違ってる気がする。私はもう、違ってしまったんだな。

第3章はロシア。ソ連は第二次世界大戦で国民2660万人が死んだと(統計により違いあり。日本は310万人くらいみたい)。だから戦争をすごく恐れている。
なのに戦争をするのはなぜか。「シロヴィキ」(KGBなどのロシアの情報機関関係の人々のこと)によるさまざまな情報分析の結果、侵攻せざるを得ないという判断になった、というけど、そんな空気で始まってはたまらない。でもそうみたい。なんだよ。
(アフガン侵攻も失敗。ブレジネフが介入してアミン政権を倒したけどその後は掌握できずソ連国内は疲弊し泥沼に、ゴルバチョフに代わってから撤退)
現在行われているのも「体制」による戦争であり、プーチンが死んでも終わらないとのこと。プーチンは、ロシアの2011のデモはアメリカにけしかけられたと考えていたと(そういう報告を受けていた、ヒラリーが裏で手を回して、ヴィクトリア・ヌーランドが計画を立てたと)。
うーん、ロシアのことほんとに知らないな。ロシアの中間層のうち、中の中・中の下の人はいつ下層におちてもおかしくないくらいのこと。日本の中間層よりだいぶシビア。ロシアは冷戦時代をうまく克服できていない。
ロシア人は理不尽をだいぶ耐えてしまう。そしてきつくてやばい状況であるほど市民はおもしろいことを言ってしまうとのこと。皮肉で笑う、ある種のレジリエンス。

5/18小泉悠 世界の大転換

第4章はヨーロッパ。まずはウクライナを、ヨーロッパとロシアどちらに近いと見るのかということから。EUにとっては、黙って挟まっててくれれば都合がよかったんだろうなあ。
ロシアに逃げたヤヌコビッチは今75歳。プーチンは2014年のウクライナ侵攻でクリミアとドンバスの一部を掌握できたけど、結果としてはウクライナという国全体を失うことになった(プーチンのオウンゴールとのこと)。だからあれは失敗で、それを取り返そうと2022年により強い侵攻に出た。
ヨーロッパでも、ロシアと地続きにあるバルト三国や東欧の国は、国防の切実さがやっぱり違うようだ。これは私たちにはわからない。「金を出して国防をする。国がなくなるよりましだ」ということのようだけど、日本はそれから見ると理想主義の日和見に過ぎるんだろう。うーん。
米国を招き続けてきたヨーロッパ。ヨーロッパ側としては「招き入れた」だけど、米国からすれば「ただ乗りしている」とも見え、だからトランプ以前から米国はヨーロッパ各国に国防費増を要求してきたとのこと。
でも、オバマが言う「世界の警察官を辞める」とトランプが言うのとではだいぶ中身は違う。トランプ的なものはまた分けて考えないといけない。
まさにこの間(5月)のトランプの訪中により、米中の関係は急激に改善された感じもあり、日本はヨーロッパとともに「自分でなんとかすれば?」と言われるのではという懸念は現実的な感じになってきた。米国は単に米国だけ(アメリカ大陸だけ)に注意を払っている。
なんというか、ヨーロッパ固有(各国固有)の問題というより対ロシア、対アメリカなんだな。そして第二次世界大戦のリアルから遠ざかり「リベラル」を嫌う人が増えているのはどこも同じか。
プーチンもトランプもたぶん習近平も、大国がいくつかあって互いにその領域を侵さずやろう、中小国はだまって大国に従っておけ、という感じのよう。
日本は……日本は本当の地政学的な意味では大国であるはずもない。「誰にとっての」安定、平和なのかを考える必要があるとのこと。日本は、ヨーロッパの小国とは安全保障連携の道がありそうだとの由。

5/20小泉悠 世界の大転換(了)

第5章は安全保障というテーマから世界を。うーん。日本も、防衛力を今以上に持つことは大切だということはわかってきたけど。具体的に何をどう備えるのがよいか。積極的に戦争をする国にはならずに、防衛のための装備、人をどういうデザインにするのかを考える時期だと。
で、具体的には無人機を大量導入する、あとは長距離ミサイル。そんで基地をもっと堅固にする。民間の空港も有事の際には使えるようにする。より、攻撃して崩壊させるのが大変だと思わせるようにしておく。想定されるのは台湾有事、あと米中戦争。日本が標的というわけじゃなくてたぶんアメリカが日本の基地を使えなくするため。
防衛力の構成には「スケーラビリティ(拡張性、拡張可能性)」と「アダプタビリティ(適応性)」が重要。転用したり改造したり柔軟にファームウェアをアップデートしたりして対応できるようなつくり。
あと、置いてある戦闘機航空機を一網打尽にされないように簡単でもいいから掩体(えんたい、強化シェルターのこと)をつけろと。
私には具体的な危機の全貌がよくわからないから、すぐ「戦争反対」「軍備を増やすくらいなら死んだほうがいい」と思ってしまう。焼け野原になってからじゃ遅いっていうけど、焼け野原にされるようなことが起こるんだったら「それ以前に、もうなにか失敗してるんじゃないの?」と思ってしまうけどなあ。
アメリカ込みの抑止をいつまで期待できるのかわからないから、軍備をGDP比で3%に、あるいは5%sにすべし、ということもリアリティが感じられない。
人は減り金も資源もない。モノはできても、人はいないんじゃないだろうか。「海上自衛隊の規模を倍に」って、誰が軍人になる?
と思ったら「人は減っていくから倍は無理だよ」と書いてあった。あと10年もすれば、今の8掛の人員になる。

  1. 戦力は維持でも即応性の低下を許容
  2. 即応性は維持でも戦力全体は規模縮小、
  3. 少ない人員とメンテナンスで運用できる無人システムを導入

この3つの選択肢のうちなら、3が現実的かと。
でもそのためには使い捨ての無人機とかを、デコイ(囮)として相当数用意しないといけないようだ。だいぶ高価な囮だけど自衛官が大量に死ぬよりましだとのこと。それはそうだけど……。 国防は難しいな。ここで喋っている先生たちだって、自分が自衛隊員になるわけじゃないし。

誰がやるのか。
日常の優先事項とどう天秤をつりあわせるのか。
解決の方法はわからない。


なんというか、ずっとうんうん言ってるだけだったよ。

「国防」とか「安全保障」とかを、一般の人間が考えることは、すぐに「なにかの役に立つ」わけじゃない。でも直接的に国家間の具体的な争いにおびやかされずにいられた「平和」「平穏」が、「国防」や「安全保障」への不安から遠ざけてくれていたのだとはわかった。

そういえば、年末から年明けにかけて読んだ本も、戦争や国防、人の争いに関するものだった(『バベル』は歴史改変ファンタジー小説だけど)。

◉R. F. クァン『バベル:オックスフォード翻訳家革命秘史』(東京創元社、2025.2.14)
◉東浩紀『平和と愚かさ』(ゲンロン、2025.12.18)

どの立場にもそれぞれの言い分があり行為があり、絶対的な悪をどこかにだけ背負わせること難しいのだと、大人になったら思うようになった。潔癖さ、正しさだけで他人の行為を断罪するのが難しくなってくる。

ヒトは愚かなものだな。でも愚かだから、何も考えなくていい平和な状態を求めるのだろう。そのために、平和をぶち壊すことになっても。